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L-カルニチン

正常な出産のために

赤ちゃん

葉酸は水溶性ビタミンB群の一種(ビタミンB9)でほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜やいちご、レバーなどに多く含まれる栄養成分です。体内の代謝への関わりが深く、たんぱく質や核酸の合成に関与して細胞の生産や再生を助け、体の発育を促す働きを持っています。

したがって、胎児の新しい細胞が作られる妊娠期や、授乳期の母親にとって葉酸は必要不可欠な栄養素です。しかし、体内で産生することができない栄養素で、常に食物等から摂取する必要があります。妊娠中の女性は葉酸の量を通常の2倍近く必要とし不足しがちになるので、積極的な摂取が求められます。特に胎児の「神経管閉合障害」の発症リスクを低減し、正常な出産を行うためには葉酸は必要不可欠な栄養素です。


厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」でサプリメントによる1日400μgの葉酸摂取を推奨

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」は国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギーおよび栄養素の量の基準を示すものですが、その中で葉酸について1日400μgの摂取を推奨しています。

葉酸の食事摂取基準(μg/日):
妊娠を計画している女性、または、妊娠の可能性がある女性は、神経管閉合障害リスク低減のために、付加的に400μg/日の「プテロイルモノグルタミン酸」の摂取が望まれる
(※400㎍ = 0.4mg)

プテロイルモノグルタミン酸とは、栄養強化剤として工業的に製造されているモノグルタミン酸型の葉酸のことです。厚生労働省は合成の葉酸、つまりサプリメントによる葉酸の摂取を推奨しているわけです。

合成の葉酸、プテロイルモノグルタミン酸に対して、野菜などの食品に含まれている天然の葉酸はプテロイルポリグルタミン酸と呼ばれます。なぜ厚生労働省が合成の葉酸を推奨しているかというと、体内における利用効率に大きな差があるからです。サプリメントに使用される合成葉酸の体内利用効率は85%であるのに対し、天然葉酸は体内での代謝過程に多くの段階を踏むために50%程度です。

また、胎児の神経管閉合障害に有用であるという疫学研究に関しても、全て栄養補助食品(合成葉酸)を使用していることも、厚生労働省がサプリメントから合成葉酸を摂取するように推奨する根拠となっています。


胎児の「神経管閉合障害」を防ぐため、積極的な葉酸摂取は不可欠

神経管閉合障害とは

新生児の先天異常の1つに「神経管閉合障害」があります。神経管は子宮内の胎児の脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる細胞の集合体で、これが妊娠初期に細胞分裂していくことで、脳や脊髄を始めとする様々な神経細胞を作り出し、妊娠6週ごろ(受精4週ごろ)に完成します。神経管は板のようなものの両端がくっついて閉合することで管の形ができ、胎児の成長とともに上部が脳、下部が脊髄となります。

神経管閉合障害は、その一部が正常に閉じなかったために起こる障害です。

上部に閉合鎖障害が起きた場合、脳が形成不全となり「無脳症」と呼ばれる状態になります。体は成長しますが頭部はほとんど形成されません。胎児期には生命機能を保つことができますが、通常は生後短期間で死に至ったり、流産や死産の確率が極めて高くなります。 下部に閉合鎖障害が起きた場合、「二分脊髄」と呼ばれる状態になります。これは脊髄組織が脊髄の骨によって覆われていないことから神経組織に障害が生じ、乳児の下肢に運動障害や排泄機能に障害が起きるものです。


2000年に厚生労働省の「葉酸摂取による神経管閉合障害の発症リスク低減」発表。
葉酸摂取の推奨始まる

厚生労働省は2000年12月、国内関係団体に「神経管閉合障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」という通知を出しました。前述の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」はこれを踏まえたものです。以下、内容を抜粋します。

妊娠を計画している女性に対しては、神経管閉合障害に発症リスクを低減させるために、妊娠1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめその他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスのとれた食事が必要であること。(中略)最近の米国等の報告では神経管閉合障害の発症リスク低減に関しては、食事からの摂取に加え0.4mgの栄養補助食品からの葉酸摂取が勧告されている等の理由から、我が国において、当面、通常の葉酸摂取量に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取することとすれば、神経管閉合障害の発症リスクは集団としてみた場合そのリスクが低減されることが期待されるものである

※「神経管閉合障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る情報提供の推進について」(平成12年12月28日日児母第72号・健医地生発第78号)
(別紙)神経管閉合障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領
第5 保険医療関係者の情報提供のあり方について
イ 妊娠を計画している女性に関しては、(略)以下下線部参照
→葉酸摂取量は、概ね0.4㎎~1㎎の範囲であれば医療従事者の判断で使用できる。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf


要するに、胎児の神経管閉合障害を防ぐために、妊娠1カ月以上前から妊娠3カ月までの間、サプリメントから毎日0.4mgの葉酸を摂取することが勧められるということです。いわゆるサプリメントを政府が推奨することはほとんどないことなので、葉酸はそれだけ効果の根拠が明らかであることにほかなりません。