栄養素としてのL-カルニチン
新生児の生存と正常な発達に長鎖脂肪酸の酸化が非常に重要であることが知られ、また、胎児と臍帯(へその緒)の血中L-カルニチン濃度が母体の血中濃度より高いことがわかっています。その理由は、胎児にはL-カルニチンの生合成機能の発達が不十分であると考えられているからです。胎児期から新生児の初期のL-カルニチン濃度は母体からのL-カルニチン供給に強く影響されます。
また、妊婦においても妊娠していない女性と比べ低い濃度であることがわかっています。その理由は、前述の胎児と臍帯血のL-カルニチン濃度の状態から容易に推察できます。
L-カルニチンを含む食品
食材におけるL-カルニチンは肉類と乳製品であると示唆されています。特に、肉の赤身(骨格筋部分)にL-カルニチンの含有量が多いと考えられています。穀類・果物・野菜にはほとんど含まれていません。また、通常、食事により5~100mg程度のL-カルニチンが含まれていると考えられています。
なお、国際連合の専門機関のうち、食糧および農作物の専門機関のFAOにおけるL-カルニチンの各国別の1日の摂取量によると、日本人の摂取量は75mg/日であり、世界の平均摂取用量も75mg/日となっています。特に羊肉を多用するニュージーランドやオーストラリアの1日摂取量は約300mg、モンゴルは約425mgと報告されています。このような国には基礎体力的に筋肉の力を要求されるラグビーやモンゴル相撲などスポーツに有能な選手が多いことに羊肉食が影響しているのかもしれません。
ちなみに最新の調査では、日本人が通常の食事から摂取しているL-カルニチンは、約48mg/日です。(※2013年ロンザジャパン社調べ)
食品可食部100g当たりに含まれるL-カルニチン量羊肉 | 167.8mg |
---|---|
鶏レバー | 94mg |
牛肉 | 76mg |
ハム・ソーセージ | 28.7mg |
豚肉 | 21mg |
鶏肉 | 10.2mg |
豆類 | 5.7mg |
牛乳 | 2.6mg |
野菜類 | 0.2mg |
出展:
Demarquoy J.et al.(2004) Food Chem;86 (1):137-142
※AAプロジェクト 「医療従事者用資料」より
例えば単純計算ですが、最小レベルの200mgを牛肉で摂取する場合、1日当たり300g弱の牛肉を継続して食べる必要があります。この場合、赤身とはいえ問題となるのがカロリーオーバーです。それとともに、肉に含まれる飽和脂肪酸の過剰摂取はメタボリック症候群の一因にもなります。L-カルニチンは摂取したいがこれらのリスクは避けたい。その場合はL-カルニチンのサプリメントを利用してみてはいかがでしょうか。
L-カルニチンの欠乏症の原因
- 必須アミノ酸のリジンおよびメチオニンの不足
- L-カルニチン生合成過程におけるビタミン(C・ナイアシン・B6ならびにB12)および鉄の不足
- ビタミンB12による合成促進機能とコリンによるL-カルニチンの減少抑制作用
- 遺伝による不足
- 小腸からの吸収不足
- L-カルニチンの生合成部位の肝臓機能低下および再吸収部位の腎臓の機能障害
- L-カルニチンの輸送経路の障害
- 高脂肪食や薬物(抗痙攣剤・抗生物質・抗HIV薬など)L-カルニチンの必要量の増大