学術情報(3) L-カルニチンの臨床(海外)評価
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海外の一般的な臨床的摂取量は、1日2~3g(L-CAR AA Basicとして8~12粒)以上のの摂取が必要な場合があります。健康状態や医薬品および他の食品(サプリメント等)との相互作用は個人差によって生じることがありますので、医師等医療従事者とご相談ください。
1.L-カルニチンと生殖および周産期
1.生殖細胞(精子および胚)研究(1)精子数および精子運動率の低下
ヒトの精子におけるエネルギー代謝には、高濃度のL-カルニチンが不可欠である。いくつかの研究によって、精液における遊離L-カルニチンのレベルは、精子の数や運動率と逆相関していることが立証されている。つまり、L-カルニチン含量が低いほど、男性が不妊である可能性が高い。
L-カルニチンの精子における生理的な役割と、男性不妊への関連を受けて、近年、精子数および精子運動率が低下している男性に対するL-カルニチンの治療的効果を測定するための研究が行なわれた。不妊のために来院した男性のうち選ばれた100人により、「Italian Study Group on carnitine and male infertility」が実施された。各被験者には、毎日3,000mgのL-カルニチンを4ヵ月間投与した。
研究の結果により、L-カルニチンは、精子の数と運動量を質、量ともに増加させることが示唆された。
- 射精された精子の数は1,420万から1、630万に増加
- 精子運動率は26.9%から37.7%に上昇
- 迅速に直線的に進行する精子の割合は10.8%から18%に増加
- 精子速度の平均は28.4%から32.5%に上昇
これらの結果は、精子運動率が非常に低い患者のみを対象にした場合、より顕著であった。この部分群では、すべての項目でいっそう有意な利益が見られた。たとえば、精子の運動率は19.3%から40.9%に上昇し、迅速に直線的に進行する精子の割合は3.1%から20.3%に増加した。
Oral administration of L-carnitine (3 g daily for four months) resulted in significant improvements in sperm number, quality, and motility in patients with inadequate sperm.[56,57] In another double-blind, crossover trial, 100 infertile males were supplemented with 2 g L-carnitine daily or placebo for two months, followed by a two-month washout period, and finally two months on the opposite treatment.
L‐カルニチン ( 4 ヵ月、毎日 3 g ) の経口服用は、精子数、精子の質及び、不適正な精子の患者における著明な改善が結論付けられた。他の男性不妊症100 人の二重盲検クロスオーバー試験では、毎日2g或いは、偽薬を2 ヵ月の偽薬を2 ヵ月のウォッシュアウト期間後に、最終的に反対の治療に従ってL‐カルニチンサプリメントが摂取された。[56,57]
Statistically significant improvements in sperm count and motility were observed in the L-carnitine group.[58] The same researchers conducted a second study on 56 infertile males and found the combination of L-carnitine (2 g daily) and acetyl-L-carnitine (1 g daily) led to significant improvement in sperm motility.[59]
精子の数及び、運動性における統計上有意の改善は、L‐カルニチン 投与群において観察された。[58] 同じ研究者は、56 人の男性不妊症の第 2 の研究を実施し、そして、L‐カルニチン ( 毎日 2 g ) 、及び、 acetyl-L-carnitine ( 毎日 1 g ) のコンビネーションによって精子運動性を著明改善した。[59]
(2)体外成熟培養におけるウシ卵母細胞の細胞質成熟におよぼすL-カルニチンの効果.
カルニチンは、長鎖脂肪酸のミトコンドリアへの輸送に関与し、β酸化による効率的燃焼を促進してエネルギー供給活発にすることから、種々の細胞の増殖・機能の促進やアポトーシスの抑制効果をもつことが知られている。本研究では、体外成熟培養(IVM)期間におけるウシ卵丘細胞卵母細胞複合体(CEO)のL-カルニチン処理が、卵母細胞の成熟および受精後の発生に及ぼす影響について検討した。
IVM期間にカルニチン処理することによって、CEOの成熟・受精後の胚盤胞への発生が無処理対象群に比べて促進されたことから、L-カルニチンは卵母細胞の細胞質成熟促進効果を持つことが明らかとなった。その効果は。濃度、依存的であり受精後8日目における胚盤胞発生率は50mMで最高値を示した(0mM 23.5%, 50mM 42.5%)。さらに、L-カルニチンは、受精後6日目に胚盤胞へ到達する割合(0mM 5.8%, 50mM 31.95%)も高めることも明らかとなった。また、RT-PCRの測定結果から、カルニチン(50mM)はIVM期に起こる卵丘細胞のアポトーシスを抑制し、その生存率を高めることが判明した。
<~京都大学農学部、日本繁殖生物学会,2004年・広島~一部抜粋>
この後、岡山大学で開催された日本臨床エンブリオロジスト学会(2007年1月~一部抜粋)では、L-カルニチンのトランスポーターのOCTNのに発現量をPCRにて確認している。L-カルニチンの成熟効果とOCTN2の発現は一致したことになる。
(3)周産期
新生児の生存と正常な発達に長鎖脂肪酸の酸化が非常に重要であることが知られています。胎児と臍帯(へその緒)の血中L-カルニチン濃度が母体の血中濃度より高いことがわかっています。その理由は、胎児にL-カルニチンの生合成機能の発達が不十分であると考えられていますので、胎児期から新生児の初期のL-カルニチン濃度は母体からのL-カルニチン供給に強く影響されます。
また、妊婦においても妊娠していない女性と比べ低い濃度であることがわかっております。その理由は、前述の胎児と臍帯血のL-カルニチン濃度の状態から容易に推察できます。
(4)SIDS(乳幼児突然死症候群;Sudden Infant Death Syndrome)
SIDSの発症には、メチルマロン酸血症やプロピオニル血症等が発生していると考えられている。これにはL-カルニチンのトランスポーターのOCTN2遺伝子の変異が生じたり、L-カルニチンの転換酵素の異常が考えられているため有効と思われる。同様の発現機序に、激しい運動後や慢性腎不全の透析治療の突然死にもL-カルニチンの欠乏が大きく関わっていると考えられている。これは、透析によって、L-カルニチンの再吸収が70-80%が消失される事によると考えられている。
2.L-カルニチンと糖尿病(インスリン抵抗性)
糖尿病患者は、血清L-カルニチン濃度が減少するものの、骨格筋のL-カルニチン濃度は正常であると報告されている。糖尿病患者には、アテローム硬化性の循環器病のリスク上昇と、腎機能および肝機能の低下が見られるため、L-カルニチンの補充は妥当であると思われる。
L-カルニチン(とくにPLC)はまた、糖尿病患者の神経機能および末梢血管機能を著しく改善させることが証明されている。神経伝達における改善は、主として伝導速度の有意な上昇に起因している。
Healthy volunteers and type 2 diabetics received an infusion of L-carnitine or saline, after which plasma glucose and insulin levels were analyzed. Insulin-mediated glucose uptake was significantly higher in both groups receiving L-carnitine compared to the saline groups, indicating improved insulin sensitivity from carnitine.[44]
健康なボランティア及び、2型糖尿病患者は、L‐カルニチンまたは、生理食塩水を注入後に、血漿グルコース及び、インスリンレベルが分析された。インシュリンに仲介されたグルコース取り込みは、生理食塩水群と比べると L‐カルニチン投与群の双方において著しく高く、カルニチンからインスリン感受性が改善されたことを示した。[44]
A small study found 500-mg intramuscular injections of L-carnitine twice daily for 15 days resulted in improvement in painful diabetic neuropathy.[45]
15日間毎日 2 回 L‐カルニチンの 500-mg 筋肉注射した小研究は、疼痛を伴った糖尿病性神経障害における改善作用を確認した。[45]
L-カルニチンのもう1つのエネルギー代謝の役割に、乳酸を利用する事もできると考えられている。ピルビン酸脱水素酵素を活性化することによって糖尿病への有効性が示唆される。ミトコンドリア研究で知られている事にL-カルニチンによるβ酸化の活性化によってアシル基をATP産生時に余剰になったCoAをアセチル基結合(アセチルCoA⇔アセチルL-カルニチン)受け渡しで遊離CoAを増加する事にある。これにより、アセチルCoA/CoA比の減少によるものと考えられている。